クエンティン・タランティーノ最新作。うーむ、さすがにタランティーノらしい、期待を裏切らない見事な傑作である。
舞台は、アメリカ中央部ワイオミング山中の雪山のロッジで、猛吹雪で閉じ込められた一癖も二癖ある8人が繰り広げる密室劇。
この8人とは、それぞれが個性的で訳ありの事情を隠しながら、静かに物語が進行していく。
– 主人公の黒人の賞金稼ぎ、マーキス
– 賞金稼ぎの相手を絞首刑に送ることにこだわりを持つ賞金稼ぎ通称ハングマンこと、ジョン・ルース
– ハングマンに捉えられ絞首刑間近の盗賊団の女リーダー、ドメルグ
– かつては南軍の略奪団であり今や新任保安官だと主張する、クリス
– ロッジの留守を任されたと主張するメキシカン、ボブ
– 一見インテリそうに見える英国紳士風の町の絞首刑執行人、オズワルド
– クリスマスを母と過ごすために故郷に戻ってきたというカウボーイ、ジョー・ゲージ
– 南北戦争で南軍の大佐だっという老人、
最初は、ハングマンがこのロッジを取り仕切り、全員の銃を取り上げ、ロッジを取り仕切っている。
しかし、ハングマンがコーヒーの毒物で殺され、物語が急展開していく。どうやらこの荒くれ者の中にドメルグを奪還しようとするギャングの一味が混じっているらしい。
個々のキャラクターが複雑に入り組んで、敵になったり味方になったり、人間関係が入り乱れて形勢がめまぐるしく変化する。
また、南北戦争にどう関わったか、黒人差別をどう考えるか、リンカーン大統領の手紙を信じるか信じないかで、グループが対立するし人間不信にもなる。
ストーリーは章立てになっていて、物語を読んでいるように面白い。各章は時間の流れを変えてあり、ミステリーが進みつつ、種明し的に順序立ててあり、展開の予測が難しくすっかりストーリーに飲み込まれていく。180分近い長い話がテンポよく進んでいくので、全く飽きさせない。
また、吹雪に閉じ込められたロッジの中という狭い空間の中で、横長のアングルで切り取り、画面の奥行きを感じさせる。
南北戦争と黒人奴隷のテーマに、タランティーノらしいひねりのあるストーリーにアメリカの核心が、見事に描かれている。
少し、銃殺シーンの描写がどぎついのが難点だが、それも彼らしい演出であろう。
PS.
よく考えてみると、もう一人主要な(?)登場人物がいた。
御者のQ.B(名前不明)である。彼は、雪の中を献身的に働き、最初にハンガーマンとともに毒入りコーヒーで死んでしまった。
そうか、彼は善人である。残りの8人とは根本的に違うのである。彼等は、Hateful(憎むべき)Eightなので、彼をそこにカウントしてはいけないのである。
PS2.
雪山のロッジということで、チャップリンの黄金狂時代も少し思い出す。特に、戸外から室内に入るのに毎回ドアを破壊し釘で固定せねばならなかったり、あまりの寒さに囲炉裏のそばで大きな毛皮をかぶるシーンなどまるで熊の着ぐるみを着ているかのようである。
クエンティン・タランティーノ長編第8作 本年度アカデミー賞3部門ノミネート 今度のタランティーノが仕掛けるのはなんと 【密室ミステリー】!ヘイトフル・エイト
情報源: 映画『ヘイトフルエイト』 公式サイト│『ヘイトフル・エイト』クエンティン・タランティーノ長編第8作 本年度アカデミー賞3部門ノミネート